洋裁と鉄道と・・・。夫婦で綴る、趣味の雑感。 ブログへのご感想、作品へのお問い合わせは yuzunoki1127@gmail.comまで。


by zakkan-daily

袋詰めの表現

作家・村上春樹の短編小説「ドライブ・マイ・カー」(文芸春秋・2013年12月号)の中で、

北海道・中頓別町出身の女性が車の窓から火のついたタバコをポイ捨てしているのを見た主人公が、

「たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」

という感想を抱く記述があることに、同町の町議有志が抗議しているという。

「町の9割が森林で防火意識が高く、車からのたばこのポイ捨てが『普通』というのはありえない」ということで、村上氏の小説は世界中にファンがおり、誤解を与える可能性がある。回答が得られなければ町議会に何らかの決議案を提出したい。

ということだが・・・

町民感情は分かるが、フィクションの世界にいちいち目くじらを立てる必要があるのかという印象。

逆手に取れば、人口2,000人に満たない中頓別町をPRするチャンスであり、

「村上春樹の小説に登場した町、中頓別。ホントはみんなマナーがいいひとばかりですよぉ~」

等と宣伝してもいいような・・・。
そんなに真面目に怒っていたら、“融通が利かない田舎”みたいな印象のほうが浮き彫りになってしまう。

村上氏も、悪意があって描写しているのではないだろう。
むしろ、中頓別町は取材で印象に残った町であることを証明しているように見える。


だったら、「毎日のように列車内で殺人事件が起こっている」 西村京太郎作品はどうなるのか・・


現在放送中の某テレビドラマも、「児童養護施設の子供の描写が残酷だ」という批判から、イメージを危惧したスポンサーがみんな降りてしまった。強気で通していたテレビ局もスポンサーが消える事態に参って謝罪、改変することになった。

私は見ていないので何ともコメントできないが、同作品は野島伸司の監修らしい。

野島ドラマは、「高校教師」 「ひとつ屋根の下」 「聖者の行進」など、衝撃的な内容のものが多く、批判は浴びたものの、あくまでも社会の影を突いたフィクション、意欲作ということで支持を受けた。
ちなみに野島伸司氏は新潟県柏崎市出身ということで、新潟ロケや人物設定が頻繁に登場していた。

今回のドラマの騒ぎも、社会的影響が大きいことはもちろん、制作時の取材が不十分だとか、視聴率だけを考えているなど、様々な意見はあるが、ネット上などで匿名の発言が当たり前になった今日、起こりうる問題なのかもしれない。


村上小説の話題と合わせて、「表現活動」を退化させることになりかねないか、危惧してしまう。


今回のような批判を正義とするなら、絵画、造形作品、音楽、文章表現すべてにおいて、万人に「ぬるま湯」であるものだけが罷り通ることになる。

良くも悪くも、「刺激」のない作品に表現の未来はない。


私たちは刺激を受け、痛みを感じて、善悪を知り、次のステップへ進んでいくものだから。

小さな子供は、転倒して擦り傷を負って、初めて血を流す痛みを知るのだから。

地球上に誕生したあらゆる生物は、環境の変化に適応しながら進化を遂げてきたのだから。


テレビはイヤなら見なけりゃいいんだから・・。

子供に不適切な番組だという前に、その内容如何を正しく説明できる大人がいないことの方が問題なのかもしれない。
by zakkan-daily | 2014-02-06 23:26 | 雑感